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テクニカルコラム
宮城県サッカー協会 技術委員長 櫻井 覚
 
VOL.6 サッカーの本質ということ
 

 2002年・・・「日本に、そして宮城に生きていてよかった。」と思えることが、この先また訪れるかとても心配です。

 2002 FIFAワールドカップは、日本、韓国のゲームはもちろん、どのゲームもスリリングで感動に満ちていて、心が震えるような戦いでした。それは、ドキュメンタリーというよりは、優れた小説を読んでいる印象さえ受けました。ゴールへのシナリオは非情かつ気まぐれであり、思惑と現実とには埋めがたいギャップがあり、しかし、必ず祝福を一身に浴びる者が現れる。サッカーにおける「過程」は重要ですが「結果」はことさら重大であることも実感させられました。何かスポーツと言うよりは、幾多の人生を早回しに見せられているように思えました。

 サッカーというゲーム、ピッチ上の全ての局面が問題解決の連続であり、「ボールを奪い、ゴールを奪う」という集団の目的のために、個人個人の判断とその確実な実行が求められます。合理的かつ柔軟な発想力。的確で迅速なリスクマネージメント能力。個性の発揮と集団のパフォーマンスとのバランス感覚。さらに、サッカーが不確実性のゲームであることを考えれば、信頼性を高めるための努力と選手同士の互いに補い合う関係が不可欠となってきます。このような観点から考えると、サッカーはその専門性と同時に、社会性や人間性、知性と言った人間的な能力を備えていなければならず、まさに私たちの社会を体現していると言えるのです。

 ワールドカップにおける洗練された高度で芸術的な技術を目の当たりにすればするほど、「サッカー界のマジョリティ」の存在が気にかかり始めました。ワールドカップの選手がマイノリティという言い方は間違っているのでしょうが、ピラミッドの頂点のスペースは限られています。確かに、この頂点に立つ選手を目指して育成強化は進められますが、圧倒的多数であるサッカー選手、あえて規定すれば、サッカーを職業としない選手が、サッカーに関わるメリットを明確にしておかなければならないでしょう。その中心となるものが、サッカーというスポーツの持つ本来の楽しさであり、かつその中で磨かれていく自分自身という存在なのです。特に少年少女に対しては、もっともっと上述したようなサッカーの本質をきちんと伝えていかなければならないのだと考えます。

 ワールドカップは本物の「サッカーの魅力」を伝え、多くの方々の関心をサッカーに向けさせてくれました。しかし、今後「サッカーの本質」をしっかり伝えていく努力をしていかなければ、サッカーの目指すところの選手は育たないだろうし、サッカーの理解者を獲得することも難しいでしょう。技術委員会では、あくまでも高いステージを目指させる指導とサッカーの本質を正しく伝えていく指導とのバランスを失わないように運営して参ります。

[ Updated: 2002.7.8 ]

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