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スポーツ医学

新型コロナウイルス感染症とどう向き合うか【サッカーファミリーへの提言】

2021.09.30

---新型コロナウイルス感染症とどう向き合うか---
 本協会スポーツ医学島村委員長の執筆です。ぜひご一読ください。

 

1.はじめに
 東京オリンピック・パラリンピック開催期間中に新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の第5波が日本中を襲いました。一時は宮城県にも緊急事態宣言が発令され、サッカーファミリーの皆さんも再び困惑されたことと思います。
 今般、新型コロナの感染者数が大幅に減少したことを受けて全国的に宣言・措置が解除されます。様々な制限が緩和されることになり、皆さんにとっても明るいニュースには違いありませんが、同時に注意しなければならないことがあります。
 以下に述べる点について、皆さんには是非ご留意いただき、新型コロナの本当の収束に向けてのご協力をお願いしたいと思います。

 
2.感染対策の継続を!
 様々な規制が緩和されますが、新型コロナウイルスは撲滅されていません。いや、撲滅は不可能かもしれません(後述)。従って、これまで行ってきた感染対策はこれからも継続してください。
 海外では「ワクチンを2回打った同士ならマスク無しでもOK」のような緩い規制の国も現れ、「いずれ日本も」と期待したときもありましたが、残念ながらマスク無しで感染を免れることはできないようです。
 オリンピック前に行われたEURO2020(欧州選手権)の試合において、英国などのサポーターがマスク無しで酒を浴びながら叫んでいたシーンが報道されましたが、案の定、相当数の新型コロナの感染者を出してしまいました(参考: https://news.yahoo.co.jp/articles/4d7b83772da2e0bc15d93feb26e35da3478ed17e )。
 前回の記事でも述べましたが、新型コロナウイルスの感染経路は飛沫・空気感染が主です。大勢で叫びながら集まって飲酒することは、いくら屋外であってもウイルスを多量に含んだ飛沫をまき散らし、また大量にそれらを吸い込むことを意味します。新型コロナの感染が容易に広がることは明らかです。
 従って、規制が緩和された後も、引き続き不織布マスクの着用、マスクを外して飲食する際の黙食、手洗い・うがいの励行、三密を避けることを徹底してください。

 
3.新型コロナワクチンの有効性
 新型コロナに対するワクチン接種は、一時期ワクチンが届かず接種希望者に打てないハプニングがありましたが、その後は少しずつ接種が進んできたように思われます。
 次項に述べるように、ワクチンを2回接種しても新型コロナに感染しないとは言い切れません。しかし、新型コロナの第5波では、感染者の大多数はワクチンを接種していない若年者であり、接種を終えた高齢者の感染が少なかったことが明らかになっています。しかも、ワクチン接種を終えた人は感染したとしても重症化しにくいことも分っています(参考: https://corona.go.jp/proposal/pdf/chishiki_20210908.pdf )。
 このように、新型コロナに対するワクチン接種の有効性は明らかになっていますので、アレルギー疾患などでワクチン接種ができない方は止むを得ませんが、まだワクチンを接種していない方は是非受けるようにしてください。

 

4.ブレイクスルー感染
 新型コロナに対するワクチン接種を終えたにもかかわらず、新型コロナにかかってしまうことを「ブレイクスルー感染」と言います。前項でワクチンの有効性を述べておきながら矛盾しているじゃないか、とご指摘の方もおられるでしょう。言い訳をさせていただくと、「有効である=絶対感染しない」ではない、ということです。
 新型コロナに対するワクチンが登場した初期の頃、もっとも接種率の高かった国がイスラエルでした。イスラエルではワクチン接種済みの国民が以前の賑わいを取り戻し、マスクをせずに日常生活を普通に楽しむ風景がテレビなどで報道されました。
 ところが、やはり落とし穴があったようで、世界的な大波(日本で言うところの第5波は世界的には第3波とみなされているようです)に呑まれて感染者が激増しました(参考: https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-09-07/QZ281YDWX2PV01 )。ワクチン接種は万能ではないということです。
 しかし、ワクチン接種が全く進んでいないアフリカ諸国では新型コロナの感染爆発がやみません(参考: https://www.jiji.com/jc/article?k=2021092500358&g=int )。ワクチン接種は万能でないまでも、新型コロナ克服への必要条件と言えるのではないでしょうか。現在、日本でも新型コロナに対する3回目のワクチン接種が検討されています。

 
5.変異株について
 ウイルスは感染した細胞の中に入り込み自分自身の遺伝子をコピーして増殖していきますが、そのコピーを間違えることがあります。それを「変異」といいます。変異の中にはより感染しやすい(ウイルスにとって好都合な)特徴を持つに至った一群(株と呼ぶ)があり、他の群を排除して権勢を誇るようになります。現在、世界を席巻しているのがデルタ株と呼ばれる変異株です。
 当初は主にインドで見つかった変異株なので、インド株などと呼ばれていましたが、変異株に国名を使うのは差別につながるとして、WHOがギリシャ文字を用いることに決めたのです(参考:https://www.afpbb.com/articles/-/3349683 )。
 デルタ株は感染力が強く、恐れられています。細胞に付着する際に使うスパイクという「腕」が変異によってより強力になったためです。
 しかし、強力なデルタ株とはいえ、不織布マスクを通り抜けやすいわけではなく、接触感染しやすくなったわけでもありません。従来通りの基本的な感染対策を行っていれば、何ら恐れることはありません。

 
6.今後の見通し
 最後に、新型コロナの今後について、分かっている範囲で述べておきます。
 まず、新型コロナの第6波は訪れるものと思っていた方がいいと思います。これから冬に向けて空気が乾燥してきますが、湿度が下がるとウイルスを含む飛沫やマイクロ飛沫(しぶきの粒のより小さいもの)は空中に漂いやすくなります。同時に寒くなるので窓を開けにくくなる、すなわち換気が疎かになります。従って、感染のリスクが増すことになり、新型コロナの再度の感染爆発につながる可能性があります。
 とはいえ、もしワクチン接種が進めば、少なくとも重症化する患者は減って、医療の逼迫とまでは至らないかもしれません。そうして、波は高くなくなっていくと思われますが、新型コロナウイルスの完全なる撲滅は難しいと考えられています。感染しても無症状の人が出てくれば、ウイルスも人から人へ密かに受け継がれていくからです。「ウィズコロナ(With Corona)」すなわちコロナとの共生などという言葉が出てきているのもそのためです。恐らくはインフルエンザと同等の扱いになる(医療費が国から出なくなる)と思われます。
 インフルエンザには治療薬がありますが、新型コロナに対しても、ワクチンの普及の他に抗体カクテル療法(最近ではカクテルでない抗体薬も出た)が有効と言われていますし、新しい内服の治療薬も使えるようになりそうですので、新型コロナで亡くなる方も減るのではないかと期待されています。

 
7.まとめ
 繰り返しになりますが、宣言・措置が解除になった後でも従来の感染対策は引き続き実施してください。不織布マスクの装着(ユニバーサルマスキング)、三密や危険な「5つの場面」(下図)の回避、手洗い・うがいの励行は当面の間は遵守をお願いします。
 新型コロナの動向によっては、今後もう少し自由な日常生活に戻っていけると思いますので、サッカーファミリーの皆さん、共に新型コロナに向き合っていきましょう!


図 感染リスクが高まる「5つの場面」 (再掲、仙台市HPより)